VRSーRTK測量 社内実証実験

1.実験概要
(1)
 目的

   近年流通してきたGPSの新技術「VRSRTK」による観測と、従来のGPS観測「スタティック法等」による観測の、「精度、作業時間、コスト」等を比較検討する。

   GIS(地理情報システム)における位置参照点設置に対応できるか検討する。

(2)VRSRTKとは?
   
国土地理院提供による、電子基準点の24時間リアルタイム観測データを利用することにより、観測データの誤差(自然条件や衛星軌道などにより生じるもの)を補正し、高精度な位置情報を取得できる。

    観測者は単独で現在の位置を計測し、これをVRSデータセンターへ携帯電話を用いて送信する。VRSデータセンターでは、これを元に観測者の近くに見えない"仮想基準点"を設置する。この仮想基準点を設置すれば、観測者は次に移動局として単独で計測を行っていく事ができる。

 

 

VRS観測

受信機+アンテナ
トプコン社製

GR-2000

コントローラー
データコレクター

トプコン社製

FC-1000

携帯電話
ケーブル

GPS受信機:GR-2000

RTK観測CE(FC-1000)

DoCoMo
モデムケーブル
10
ダウンロードケーブル

解析処理

トプコン社製 GNSS統合データ処理プログラム GNSS−Pro

 

2.実験方法

(1)    従来のGPS観測については、平成10年に弊社がGPS測量及びトータルステーションで測量した公共測量成果「3級基準点」を使用するため、観測・解析等の作業は省く。

(2)    VRS−RTKで測量するデータは「世界測地系」であり、今後の公共測量においても「世界測地系」が主流になるため、公共測量成果を国土地理院開発の「TKYJGD」を使用し日本測地系を世界測地系に座標変換する。 

(3)    次の3級基準点を点の記より探し、VRS−RTK観測を行う。
58NO.高山3
41NO11
41NO12

(4)     VRS-RTKの観測時間を計る。 

(5)     VRS-RTK観測データを解析処理ソフトにより解析する。 

(6)     公共測量成果と比較する。

3.実験結果

(1) 観測時間・個々の精度等の比較

【単独測位】
 
登山やレジャー等の汎用向けに利用されているGPS受信機は単独測位という測位方式をとっている。 この方式は1台のGPS受信機を調べたい場所である未知点に置くだけで位置情報を得ることができる。 しかし様々な誤差要因から精度は10m〜50m程度のものになる。

【相対測位】
 
測量等の精度を要求される場合、相対測位という測位方式が利用される。 この方式では調べる位置である未知点と、既に位置として座標の分かっている既知点の2ヶ所に1台づつ受信機を置き同時に同じ衛星からのデータを受信する。 これにより電離層や大気圏における伝搬遅延といった受信機単位で発生する誤差要因を打ち消し合うことができ、高精度な位置情報を取得することができる。しかし、受信機が複数台必要であったり、受信機の距離が離れるほど受信機間の誤差要因が変化して精度が劣化するといった問題がある為、使用にはある程度の技術を要する。

以上の事と今回のVRS−RTKから従来のGPS測量と比較したものを以下の表にまとめる。

 

従来のGPS測量

VRS−RTK測量

観測時間

スタティック法で観測開始から60分以上

観測開始から2秒〜5秒

精  度

スタティック法で数ミリ

1cm〜3cm位

(固定局を置くことにより4級基準点程度の精度は確保できる)

機器の台数

複数台必要

1台で良い

(2)        公共測量成果(座標変換後)とVRS-RTK観測成果との比較 

測点名

公共測量成果

VRS-RTK成果

位置の差

58NO高山3

X座標:18123.623m

Y座標: 5580.977m

標 高:  564.162m

X座標:18123.600m

Y座標: 5581.014m

標 高:  564.066m

X座標:  0.023m

Y座標: -0.037m

標 高:  0.096m

41NO11

X座標:18282.572m

Y座標: 5846.401m

標 高:  562.018m

X座標:18282.552m

Y座標: 5846.431m

標 高:  562.068m

X座標:  0.020m

Y座標: -0.030m

標 高: -0.050m

41NO12

X座標:18507.607m

Y座標: 5774.009m

標 高:  564.116m

X座標:18507.600m

Y座標: 5774.034m

標 高:  564.216m

X座標:  0.007m

Y座標: -0.025m

標 高: -0.100m

 以上の結果により3点の座標差の平均を求めると 

X座標:  0.017m

Y座標:  0.031m

標 高:  0.082m

となった。 

この差の原因は座標変換の関係、衛星の関係、解析処理の関係など微小な誤差の集合と思われる。また、標高については水準測量の誤差やジオイド等の計算の関係から10cm位の差は出ると思われる。 

41NO12では5分程度時間をおき、2回観測を行った。41NO12 VRS-RTK観測

1回目

2回目

観測値の差

X座標:18507.600m

Y座標: 5774.034m

標 高:  564.216m

X座標:18507.585m

Y座標: 5774.031m

標 高:  564.179m

X座標:  0.015m

Y座標:  0.003m

標 高:  0.037m

以上のような結果になったが衛星軌道等の関係上、やむを得ない差であるといえる。

(1) メリット
・観測時間、解析時間、機器の台数、作業員数など従来の
GPS測量より大幅にコストを削減できると予想される。
 

・精度は数cmと多少悪いが、地形測量やGISにおける位置参照点設置業務等には充分な精度であるといえる。 

・既知点に固定点を設置することにより4級基準点測量程度の成果を取得することが出来る。 

(2)    デメリット

・従来のGPS測量にも言えることであるが、上空の視界を確保しなければならないため、山林等では使用することが出来ない。

VRSセンターとは携帯電話で通信を行うため、携帯電話サービスエリア外では使用することが出来ない。

 

岐阜県では、昨年度から県域統合型GIS共有空間データ整備業務において、道路台帳の修正業務で位置参照点設置にVRS−RTK測量が使用されている。

また、自治体発注の中でも「局地的な地域で、高精度を必要としない」業務については現在多くの業務で「任意座標」を用いて作業をしている。VRS−RTK測量を使用することにより安価で世界測地系座標を付与することができ、GISの空間データへも円滑に移行することができる。

今後の動向に期待される。

 

実験風景写真